治療を続けても痛みやしびれ、関節の可動域制限などの症状が残る場合は、後遺障害等級認定の申請を検討しましょう。
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償に大きく影響します。そのため、適正な補償を受けるためにも、交通事故の被害者にとって非常に重要な手続きです。
本記事では、実体験も踏まえながら、後遺障害が残った場合に、等級認定を受けるまでの流れを解説します。
後遺障害に関する損害賠償とは
後遺障害に対する主な損害賠償項目は以下の通りです。
1、逸失利益
後遺障害により労働能力の一部または全部を喪失したために、将来発生するであろう収入の減少分
2、慰謝料
事故による精神的苦痛に対する補償等
後遺障害等級が認定されると、認定された等級に応じて慰謝料や逸失利益などの補償額が決まります。
後遺障害とは
交通事故による怪我を治療しても、それ以上の回復が見込めない「症状固定」と医師から診断された後も、身体や精神に症状や障害が残り、一定の認定基準を満たしたものを後遺障害といいます。
後遺障害として認定されるためには、その症状が交通事故による怪我と因果関係があり、将来にわたって回復が困難であること、医学的に症状が認められること、さらに労働能力の全部または一部が失われていることなどの要件を満たす必要があります。
後遺障害等級認定とは
後遺障害等級認定とは、自賠責保険において、後遺障害がどの等級に該当するかを認定する制度です。
後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令(自賠法施行令)に基づき、介護を要する後遺障害とそれ以外の後遺障害の2種類に区分され、障害の内容や程度に応じて1級から14級まで定められています。
認定された等級は、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償額に大きく影響するため、交通事故被害者にとって重要な手続きとなります。
▶ 後遺障害等級表(1級~14級)の詳細はこちら(国土交通省)
後遺障害等級認定の申請の流れ
治療を継続する
交通事故による怪我の治療では、通院やリハビリが長期間に及ぶこともあり、仕事や日常生活との両立が負担になる場合があります。しかし、症状が残っているにもかかわらず、自己判断で通院やリハビリを中断したり、治療をやめたりすることは避けましょう。
治療を途中で中断すると、症状が十分に改善しないだけでなく、後遺障害等級認定の申請や損害賠償に影響する可能性があります。その結果、本来受けられる可能性があった後遺障害慰謝料や逸失利益などの補償を受けられなくなるおそれもあります。
症状が続いている間は、医師や理学療法士などの指示に従い、通院やリハビリを継続することが大切です。
症状固定と診断される
症状固定とは、交通事故による怪我を治療した結果、それ以上治療を続けても大きな改善が見込めないと医師が判断した状態をいいます。 症状固定と診断されたからといって、症状が完全に治ったことを意味するわけではありません。痛みやしびれ、関節の可動域制限などの症状が残ることもあります。
また、後遺障害等級認定は、症状固定後に申請を行うことになります。そのため、症状固定は後遺障害等級認定の手続きを進めるうえで重要な節目となります。
症状固定を判断するのは医師
症状固定の時期は自己判断で決めるものではなく、主治医が治療経過や症状を総合的に判断して決定します。ただし、医師によっては患者の意見も踏まえ、総合的に判断してもらえる場合があります。現在の痛みや日常生活で困っていること、リハビリを継続したい理由などをしっかり伝えたうえで、「もう少し治療を続けたい」と相談してみるのも一つの方法です。
一方で、症状固定の時期を医師が医学的な判断に基づいて決定することもあります。その場合は感情的にならず、疑問や不安があれば理由を確認し、今後の治療方針について相談しましょう。医師との信頼関係を保つことは、その後の後遺障害診断書の作成などを円滑に進めるうえでも大切です。
実体験から伝えたいこと
これは私自身の実体験から感じたことですが、医師も人間です。
私は主治医に、交通事故による怪我であることや、治療・リハビリにしっかり取り組みたいという気持ちは伝えていました。しかし、被害者であることを、もっと早い段階で主治医に伝えておけばよかったと感じています。
私自身は、交通事故では被害者であるか加害者であるかによって、医師とのコミュニケーションや受け止め方が変わることもあるのではないかと感じました。
また、交通事故では、相手方の保険会社から主治医へ症状固定時期などについて意見を求める書類が送られることがあります。私の経験では、その書類に症状固定日の予定が示され、主治医がその日を症状固定日として記載すると、その日を前提に手続きが進められました。
だからこそ、交通事故の被害者であることは早い段階で主治医へ伝えておくことをおすすめします。そのうえで、現在の症状や日常生活で困っていること、治療やリハビリを続けたいという思いをしっかり共有し、信頼関係を築くことが大切だと感じています。
症状固定後の補償について
症状固定日以降の治療費やリハビリ費用、通院にかかる交通費は、原則として相手方の任意保険会社による支払いの対象外となります。また、事故の怪我により仕事を休んでいる場合に支払われる休業損害についても、原則として症状固定日以降は支払いが終了します。
そのほか、通院慰謝料(入通院慰謝料)、入院雑費、付添看護費などについても、原則として症状固定日までが補償の対象となります。
さらに、症状固定日は治療期間や慰謝料の算定にも関わるため、症状固定の時期によって損害賠償額が大きく変わることがあります。また、十分な治療期間を経ずに症状固定となった場合は、後遺障害等級認定で後遺障害として認められない可能性もあります。
相手保険会社は、治療費や休業損害などの支払いが症状固定日を境に終了するため、症状固定を提案してくることがあります。しかし、症状固定の時期は医学的な判断に基づいて決められるものであり、保険会社が決定するものではありません。
そのため、現在の痛みやしびれ、日常生活への支障などを医師へ正確に伝え、自分の症状に見合った判断をしてもらうことが大切です。また、保険会社から症状固定について提案があった場合は、安易に同意せず、まずは主治医や弁護士に相談することをおすすめします。
症状固定までの期間の目安
症状固定までの期間は、怪我の種類や重症度、治療経過によって異なります。以下は一般的な目安です。
むち打ち
むち打ちとは、交通事故などの衝撃により首に強い負担がかかり、痛みやしびれなどの症状が起こることをいいます。主な症状は、首の痛みのほか、頭痛、めまい、吐き気、しびれ、耳鳴りなどさまざまです。むち打ちの場合、症状固定までの期間は、一般的に事故から約6か月以上が一つの目安とされています。
骨折
骨折の場合、症状固定までの期間は約12か月が一つの目安とされています。ただし、骨折した部位や治療内容、回復状況によって異なります。
醜状障害(しゅうじょうしょうがい)
醜状障害とは、交通事故による傷あとや変形など、外見に残る障害をいいます。ケロイド状の傷あとやデグロービング損傷(皮膚が広範囲にはがれる損傷)など、その症状はさまざまです。症状固定までの期間は、一般的に事故から約6か月以上が一つの目安とされています。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、交通事故などで脳が損傷し、記憶力や注意力、言語機能、感情のコントロールなどに障害が生じる状態をいいます。受傷後6か月から1年程度で症状が安定し、症状固定と判断されることが多いとされています。ただし、症状の程度や回復状況によっては、それ以上の期間を要する場合もあります。
なお、相手方の保険会社からは、一般的な症状固定期間のおよそ半分程度を目安に、症状固定を提案されるケースもあります。
後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害診断書とは
症状固定後に主治医が作成する診断書で、後遺障害等級認定を申請する際に提出する重要な書類です。正式名称は「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」といいます。
診断書には、治療期間をはじめ、現在残っている症状、関節の可動域、神経症状、画像検査の所見、今後回復の見込みなどが記載されます。
後遺障害診断書の入手方法
後遺障害診断書には決まった書式があるため、以下の方法で入手してください。
- 任意保険会社または自賠責保険会社から取り寄せる
(加入先もしくは相手方含む) - インターネットから書式をダウンロードする
▶後遺障害診断書をダウンロードする(PDF) - 契約済みの弁護士から入手する
後遺障害診断書の作成を依頼するタイミング
後遺障害診断書は、症状固定後に作成・発行してもらうのが原則です。
ただし、診断書の作成には時間がかかることがあるため、医師への依頼は通院状況などにもよりますが、症状固定予定日の約1か月前を目安に行うことをおすすめします。
事前に依頼しておくことで、症状固定前に関節可動域の測定や、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査を計画的に実施してもらいやすくなります。また、これらの検査結果を後遺障害診断書へ適切に反映してもらうためにも、早めに相談しておくことが大切です。
さらに、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査は、後遺障害等級認定の申請時に提出する重要な資料です。診断書の作成を依頼する際は、必要な画像検査についてもあわせて医師へ相談し、必要に応じて実施を依頼しましょう。
後遺障害診断書の作成が遅れると、その後の後遺障害等級認定の申請も遅れてしまいます。
認定機関での審査には数か月以上かかることもあるため、少しでも早く認定結果を受け取るためにも、診断書は早めに依頼しておくことが大切です。
現在の症状をまとめたメモを主治医へ渡す
私の場合は、現在の身体症状をより正確に伝えるため、A4用紙1枚に症状や日常生活への支障などをWordでまとめ、後遺障害診断書の作成を依頼する際に主治医へお渡ししました。
その際は、次のようにお伝えしました。
「現在の身体症状を自分なりに整理してきました。診断書のご参考程度に見ていただけたら助かります」
医師も多くの患者を診察しているため、すべての症状や日常生活への影響を限られた診察時間内で把握することは容易ではありません。
私は、現在の病状を適切に後遺障害診断書へ反映してもらうためにも、症状をまとめたメモをお渡しすることは有効だと感じました。
ただし、診断書を作成するのは主治医です。メモはあくまでも参考資料としてお渡しし、主治医に失礼のないよう丁寧にお願いすることが大切です。
身体障害者診断書・意見書や障害年金診断書もあわせて相談しましょう
後遺障害が残る場合は、後遺障害診断書だけでなく、身体障害者診断書・意見書や障害年金診断書の作成対象となる可能性があります。
そのため、後遺障害診断書の作成を主治医へ依頼する際は、自分の症状が身体障害者手帳や障害年金の対象となる可能性があるかについても、あわせて相談してみることをおすすめします。
診断書はそれぞれ提出先や目的が異なるため、記載内容や様式も異なります。しかし、診察や検査の結果を基に作成される点は共通しているため、必要となる可能性がある場合は、後遺障害診断書の依頼とあわせて相談しておくことで、手続きをスムーズに進められる可能性があります。
後遺障害診断書の記載内容を確認する
医師から診断書を受け取ったら、そのまま提出するのではなく、必ず自分で記載内容を確認しましょう。
弁護士へ依頼している場合は、提出前に診断書の内容を確認してもらうことをおすすめします。後遺障害等級認定の観点から、記載漏れや不足している点がないか確認してもらえる場合があります。
後遺障害等級認定では、診断書の記載内容や提出する医療資料が認定結果に大きく影響します。本来であれば後遺障害等級に該当する可能性があるケースでも、後遺障害診断書の記載内容が不十分であったり、必要な情報が不足していたりすると、不認定や、本来より低い等級と判断される可能性があります。
後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益を受け取れないため、診断書の内容を十分に確認したうえで提出することが大切です。
後遺障害診断書の記載不備がある場合
後遺障害診断書を確認して記載漏れや内容に誤りがあった場合は、そのまま提出せず、まずは診断書を作成した医師に相談しましょう。
弁護士に依頼している場合は、弁護士に相談したうえで、被害者・弁護士・医師の3者で医師面談を行い、診断書の記載内容について弁護士から医師に直接確認や意見を伝え、必要に応じて追記や訂正をお願いする方法もあります。
交通事故や後遺障害等級認定に関する知識を持つ弁護士に医師面談へ来てもらうことにより、追記や訂正また記載漏れなどの取りこぼしを減らせるでしょう。
後遺障害等級表を見ておく
後遺障害等級認定を申請する前に、後遺障害等級表を確認しておきましょう。
自分の症状がどの等級に該当する可能性があるのか、また認定された場合に慰謝料・逸失利益など、どの程度の補償を受けられるのかを事前に把握しておくことは大切です。
後遺障害等級表を確認しておくことで、どのような症状や可動域、画像検査などが後遺障害等級認定の判断材料となるのかを理解できます。そのうえで、後遺障害診断書に現在の症状や検査結果が適切に記載されているかを確認でき、記載漏れや不足に気付くきっかけにもなります。
また、認定された場合のおおよその補償内容を知っておくことで、今後の生活や治療に対する不安を少しでも軽減できるでしょう。
後遺障害等級表
後遺障害等級は、介護の必要性の有無によって「介護を要する後遺障害」と「介護を要しない後遺障害」の2種類に区分されています。また、第1級から第14級まで定められており、数字が小さいほど重い障害であることを表しています。
等級ごとに、自賠責保険の保険金額(支払限度額)が定められており、認定された等級に応じて慰謝料や逸失利益などに対する保険金の支払いを受けられます。
介護を要する後遺障害等級及び限度額(別表1)
| 等級 | 保険金額 |
|---|---|
| 第1級 | 4,000万円 |
| 第2級 | 3,000万円 |
後遺障害の等級及び限度額(別表2)
| 等級 | 保険金額 | 等級 | 保険金額 | 等級 | 保険金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1級 | 3,000万円 | 第6級 | 1,296万円 | 第11級 | 331万円 |
| 第2級 | 2,590万円 | 第7級 | 1,051万円 | 第12級 | 224万円 |
| 第3級 | 2,219万円 | 第8級 | 819万円 | 第13級 | 139万円 |
| 第4級 | 1,889万円 | 第9級 | 616万円 | 第14級 | 75万円 |
| 第5級 | 1,574万円 | 第10級 | 461万円 |
※自賠責保険基準となります。
死亡された場合 支払い限度額:1名につき3,000万円
逸失利益(将来得られたであろう収入から生活費を控除して算定)と慰謝料(本人及び遺族ごとに定額)、葬儀費(100万円)が支払われます。
後遺障害等級は、障害の内容によって細かく基準が定められています。詳しい等級表については、国土交通省の公式ページをご確認ください。
▶ 国土交通省「後遺障害等級表」
後遺障害の併合について
併合とは、異なる部位に後遺障害が認められた場合に、それらを1つの後遺障害等級として定めることです。後遺障害の内容や等級の組み合わせに応じて、法令で定められた併合のルールに従い、最終的な等級が決定されます。
そのため、複数の後遺障害が残り、併合に該当する可能性がある場合は、事前に確認しておくことが大切です。併合によって、より重い後遺障害等級が認定された場合には、受け取れる慰謝料や逸失利益などが増える可能性があります。
基本的な条件
- 5級以上の後遺障害が2つ以上あるとき→重い方の等級を3級繰り上げる
- 8級以上の後遺障害が2つ以上あるとき→重い方の等級を2級繰り上げる
- 13級以上の後遺障害が2つ以上あるとき→重い方の等級を1級繰り上げる
- 14級の後遺障害が2つ以上あるとき→等級を繰り上げず14級のままとする
後遺障害の加重について
加重とは、交通事故以前からすでに後遺障害が残っていた同一部位について、今回の事故によってさらに障害が加わり、以前よりも重い状態になることをいいます。
この場合、加重後の後遺障害等級に応じた保険金額から、事故前から存在していた後遺障害に対する保険金額を差し引いた金額が支払われることになります。
交通事故慰謝料の算定基準
後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの算定基準があります。
慰謝料の金額は、
自賠責保険基準<任意保険基準<弁護士基準
の順に大きくなります。
一般的に、加害者側の保険会社は自賠責保険基準、またはそれよりも少し高い任意保険基準で慰謝料を提示し、その金額をもとに示談交渉を進めようとします。
一方、弁護士基準(裁判基準)は、過去の裁判例などをもとに慰謝料を算定する基準です。適正な慰謝料額を算定するためにも、弁護士基準での慰謝料を検討することが大切です。
弁護士基準での慰謝料を被害者自身が請求することも可能ですが、相手方の保険会社がその金額を受け入れないケースもあります。そのため、弁護士基準での慰謝料をスムーズに請求するためには、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
後遺障害慰謝料の金額相場
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて以下のとおり定められています。
任意保険基準は、加害者側の任意保険会社が独自に設定している基準であり、一般には公表されていません。そのため、ここでは自賠責保険基準と弁護士基準の慰謝料額をまとめます。
| 後遺障害等級 | 弁護士基準の慰謝料額 | 自賠責保険の慰謝料額 |
|---|---|---|
| 要介護1級 | 2,800万円 | 1,650万円 |
| 要介護1級 | 2,370万円 | 1,203万円 |
| 1級 | 2,800万円 | 1,150万円 |
| 2級 | 2,370万円 | 998万円 |
| 3級 | 1,990万円 | 861万円 |
| 4級 | 1,670万円 | 737万円 |
| 5級 | 1,400万円 | 618万円 |
| 6級 | 1,180万円 | 512万円 |
| 7級 | 1,000万円 | 419万円 |
| 8級 | 830万円 | 331万円 |
| 9級 | 690万円 | 249万円 |
| 10級 | 550万円 | 190万円 |
| 11級 | 420万円 | 136万円 |
| 12級 | 290万円 | 94万円 |
| 13級 | 180万円 | 57万円 |
| 14級 | 110万円 | 32万円 |
表を比較すると分かるように、弁護士基準は自賠責保険基準と比べて慰謝料額が高く設定されており、等級によっては大きな差があります。
そのため、後遺障害等級が認定された場合でも、どの算定基準かによって、受け取れる慰謝料額が大きく変わります。
逸失利益の算出
逸失利益の計算式は決まっており、以下の通りとなります。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数=逸失利益
事故当時にどのような仕事や生活をしていたのか、将来どのように働くことが見込まれていたのかなどによって、算定方法や金額が変わってきます。今回は会社員として考えていきます。
計算例
36歳の会社員で前年度の年収300万円、10級9号の後遺障害が認定された場合
10級9号の労働能力喪失率27%、67歳-36歳=就労可能年数31年に対応するライプニッツ係数20.00より
300万円×27%×20.00=1620万円
このように、後遺障害等級だけでなく、年齢や収入などによって逸失利益の金額は変わります。
▶国土交通省 労働能力喪失率表及びライプニッツ係数(PDFより)
後遺障害の申請方法は2種類ある
後遺障害等級認定を申請する方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
「事前認定」と「被害者請求」の大きな違いは、後遺障害等級認定の申請手続きを誰が行うかという点です。
- 事前認定:加害者側の任意保険会社が手続きを行う
- 被害者請求:被害者自身が手続きを行う
それぞれメリット・デメリットがあるため、違いを理解して、自分に合った申請方法を選びましょう。
事前認定のメリット・デメリット
メリット
被害者は、後遺障害診断書と、レントゲンなどの画像資料を医療機関から借り受けるために必要な同意書を加害者側の任意保険会社へ提出します。その後の資料収集や申請手続きは任意保険会社が行うため、被害者の負担が少ない申請方法です。
デメリット①
一方で、被害者や弁護士は、任意保険会社が提出する資料を確認することができません。
そのため、後遺障害等級認定に必要な検査結果や医療資料が適切に提出されず実態に見合った等級に認定されない可能性があります。
任意保険会社は、被害者に有利となる資料を積極的に追加・提出することは基本的にありません。
デメリット②
事前認定では、相手方保険会社との示談交渉が成立するまで賠償金の支払いを受けることができません。そのため、自賠責保険の支払限度額や仮渡金を示談前に先行して受け取ることもできません。
被害者請求のメリット・デメリット
メリット①
被害者請求では、提出書類を被害者や弁護士が確認したうえで申請できるため、後遺障害等級認定に必要な検査結果や医療資料が適切に提出されないリスクを減らすことができます。その結果、実態に見合った等級認定につながる可能性があります。
メリット②
被害者請求によって後遺障害等級が認定されると、認定された等級に応じた自賠責保険の支払限度額を、相手方保険会社との示談成立前でも受け取ることができます。
また、条件を満たす場合には仮渡金の請求も可能です。
示談成立までには時間がかかることもあるため、先に受け取った自賠責保険金などを治療費や生活費などに充てられることは、被害者にとって大きなメリットです。
デメリット
自賠責保険へ提出する申請書類を被害者自身で準備する必要があります。
どの書類が必要なのか、どのような内容を記載すればよいのか分からず、手続きに負担を感じる方も少なくありません。
具体的には、事故発生状況報告書、後遺障害診断書、交通事故証明書など、さまざまな書類を準備する必要があります。
ただし、交通事故に詳しい弁護士へ依頼すれば、必要な書類の準備や申請手続きについてサポートしてもらうことができます。
結局どっちがいいの?被害者請求がおすすめ
事前認定は手続きの負担が少ない一方、提出される資料を自分で確認できません。
被害者請求は、提出する書類や医療資料を自分で確認できるうえ、後遺障害等級が認定されれば示談成立前に自賠責保険の支払限度額を受け取れるメリットもあります。
そのため、手間はかかりますが、後遺障害等級認定をしっかり準備して申請したいのであれば、被害者請求をおすすめします。
ただし、提出する資料や内容が同じであれば、事前認定と被害者請求で認定結果が変わるわけではありません。どちらの場合も、自賠責損害調査事務所が提出された資料をもとに後遺障害等級の調査を行います。重要なのは、必要な医療資料や検査結果を適切にそろえて申請することです。
仮渡金とは
被害者は、損害賠償額が確定するまで、十分な補償を受けられないことがあります。
しかし、損害賠償額が確定するまでの間にも、治療費などの出費が必要になる場合があります。
そこで、死亡事故や長期間の入院を余儀なくされる事故などの場合、当面の出費に充てるため、被害者側から自賠責保険会社へ仮渡金を請求することができます。
必要書類を準備する
後遺障害等級認定を申請するには、さまざまな書類を準備する必要があります。特に被害者請求を行う場合は、必要な書類を自分で準備する必要があります。
必要な書類に不備や不足があると、手続きがスムーズに進まない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
自賠責保険(共済)請求 提出一覧表

◎印は必須提出となる書類、〇印は事故の内容によって提出となる書類です。その他の書類も必要に応じて提出する場合があります。また、書類については原本提出となります。
太字の書類は、損害保険会社等に備え付けてあります。
ややこしいので、加害者請求(被害者が加害者に損害賠償額を請求)≒事前認定として考えてください。
最新・詳しい情報は下記より
▶損害保険料算出機構 「自賠責保険(共済)損害調査のしくみ」PDF
自賠責保険請求の期限に注意
後遺障害等級認定の申請には期限があります。期限を過ぎると時効となり、自賠責保険から保険金が支払われなくなる可能性があるため注意が必要です。
1.事前認定(加害者請求)の場合
被害者や病院などに損害賠償金を支払った翌日から3年以内
分割して個々に支払ったときは、それぞれ支払った翌日から3年以内
2.被害者請求の場合
傷害の場合は事故が起こった翌日から、死亡の場合は死亡した翌日から、後遺障害の場合は後遺障害の症状が固定した翌日から、それぞれ3年以内です。
※治療が長引いたり、示談交渉がまとまらなかったりすると、期限までに請求できない場合もあります。そのような場合は、時効を更新するための手続きが必要になるため、早めに保険会社などへ確認しておきましょう。
後遺障害等級認定を申請し、結果を受ける
必要な書類を準備したら、後遺障害等級認定の申請を行います。
被害者請求の場合は、必要な書類をそろえて加害者側の自賠責保険会社へ提出します。
申請から保険金支払いまでの流れ
① 被害者が自賠責保険会社へ必要書類を提出
↓
② 自賠責保険会社が書類を確認し、自賠責損害調査事務所へ調査を依頼
↓
③ 自賠責損害調査事務所が後遺障害等級を調査
↓
④ 調査結果を自賠責保険会社へ報告
↓
⑤ 自賠責保険会社が支払額を決定
↓
⑥ 被害者へ保険金が支払われる
その後、自賠責保険会社が書類に不備がないか確認し、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所へ後遺障害等級の調査を依頼します。
自賠責損害調査事務所は、自賠責保険会社から必要書類を受け取り、提出された診断書や画像検査などの医療資料をもとに後遺障害等級の調査を行います。
調査結果を自賠責保険会社へ報告し、自賠責保険会社が後遺障害等級に応じた支払額を決定したうえで、被害者へ保険金が支払われます。
損害保険料率算出機構とは
損害保険料率算出団体に関する法律に基づき設立された法人で、自賠責保険の支払いのため、全国に自賠責損害調査事務所を設置し、請求書類に基づいて、事故発生状況、支払いの的確性および発生した損害の額などを公正かつ中立的な立場で損害調査を行っています。
任意保険会社との示談やお金のことはどうなるの?
被害者請求の場合、後遺障害等級が認定されると、まず自賠責保険から等級に応じた保険金が支払われます。
その後、自賠責保険で支払われる金額を超える損害については、加害者側の任意保険会社との示談交渉で賠償額を決めることになります。
任意保険会社との示談交渉につきましては、別記事になります。
▶作成中

