交通事故の被害者になったらやるべきこと【事故後編】

Medical consultation 交通事故

交通事故後は、病院の受診・警察への対応・保険手続きなど、複数の手続きを順番に進める必要があります。私自身の経験からも、早い段階で正確に対応しておくことが、その後の手続きや補償に大きく影響すると感じました。

病院を受診する

交通事故に遭った場合は、当日中、遅くとも2~3日以内に病院の整形外科へ受診しましょう。受診の際は、受付や医師に対して「交通事故による怪我」であることを伝え、事故による受傷であることを正確に記録してもらうことが大切です。

診察では、「少し痛むだけだから」「そのうち治るだろう」と自己判断せず、痛みや違和感、しびれ、動かしにくさなど、気になる症状をすべて具体的に医師へ伝えましょう。症状を正確に伝えることで、適切な検査や治療につながります。

また、治療方法や通院頻度については自己判断せず、医師と相談しながら適切に進めることが大切です。

警察へ提出する診断書を作成してもらう

交通事故で怪我をした場合は、受診時に警察へ提出する診断書の作成を依頼しましょう。

この診断書は、人身事故として届け出る際に必要となる重要な書類です。また、交通事故による怪我を証明する資料として、保険会社とのやり取りや損害賠償手続きでも重要な役割を果たします。

診断書の作成には費用がかかる場合がありますが、通常は損害賠償の対象となるため、領収書も大切に保管しておきましょう。

受診が遅れるリスク

交通事故では、事故直後は興奮状態やアドレナリンの影響により痛みを感じにくく、数日後になって首や腰の痛み、しびれ、頭痛などの症状が現れることも少なくありません。

しかし、事故後すぐに受診しなかった場合、後から症状が現れても、保険会社から「事故との因果関係が明確ではない」と判断される可能性があります。

また、事故から受診までの期間が空くほど、「交通事故による怪我」であることを客観的に証明することが難しくなる傾向があります。

一方で、早期に受診していても、病名が後から判明するケースもあります。

私自身も交通事故後、右膝の痛みがあり、歩く際にはびっこを引いていました。その症状は事故直後から医師へ伝えていましたが、MRI検査が混んでおりすぐには行われず、事故から約2か月後に検査を受けた結果、前十字靱帯損傷であることが判明しました。

その後、相手方の保険会社からは、「なぜ事故から約2か月後に病名が付いたのか」について、直接担当医へ意見書の提出が求められていました。

担当医は、「MRI検査を後回しにしたため診断が遅れただけであり、受傷自体は交通事故によるものである」と医学的な意見を示してくださいました。その結果、交通事故による怪我であることが認められました。

この経験から強く感じたのは、病名が後から判明したとしても、事故直後に受診し、症状を医師へ正確に伝え、診療記録に残しておくことが何より重要だということです。

もし私が事故直後に受診していなかったり、膝の痛みを医師へ伝えていなかったりした場合は、交通事故との因果関係を証明することがさらに難しくなっていた可能性があります。

つまり、「病名が付く時期」よりも、「事故直後から症状を訴え、その記録が残っているか」が、保険会社とのやり取りや損害賠償において重要なポイントになるのです。

保険請求・損害賠償にも重要な書類

保険会社は、診断書や診療記録、検査結果、通院状況などの医療資料をもとに、治療費や慰謝料などの補償内容を判断します。  

そのため、診療記録や診断書は、事故との因果関係を証明する重要な資料となります。

診断書を警察へ提出する

交通事故で怪我をした場合は、病院で診断書を作成してもらい、人身事故としての処理を希望の上、警察へ提出しましょう。

また、被害者が入院中などの事情により自ら診断書を提出できない場合は、家族や親族に提出を依頼することも検討しましょう。

人身事故への切り替え

事故直後は物損事故として処理されることがありますが、後から怪我が判明した場合でも、診断書を警察へ提出することで人身事故への切り替え手続きが可能です。

人身事故として扱われることで、実況見分や捜査が行われるほか、加害者に対する行政処分や刑事処分の判断資料にもなります。

また、事故と怪我との関係が公的記録として残るため、後の損害賠償請求や後遺障害認定においても重要な資料となります。

なお、警察は被害者の診断書だけで手続きを進めることもあります。

提出期限の目安

法律上、「〇日以内に提出しなければならない」という明確な期限はありません。

ただし、事故から長期間経過すると、

  • 怪我と事故との因果関係
  • 症状の発生時期

などについて疑問を持たれる可能性があります。

事案の内容や担当する警察の個別の判断にもよりますが、1か月以上経過してしまうと、実況見分を行ってもらえなかったり、そもそも切り替えの申請自体を事実上断られるケースも出てきます。

そのため、診断書は取得後できるだけ早く警察へ提出することをおすすめします。

目安として、事故後できるだけ早く、遅くとも1~2週間以内に提出できれば、比較的スムーズに手続きが進む傾向にあります。

人身事故に切り替えるメリット

【メリット】

  • 実況見分が行われるため事故状況の証拠が残る
  • 加害者に対する行政処分や刑事処分の判断資料となる
  • 事故と怪我との関係を公的に記録できる
  • 治療費、慰謝料、休業損害などの損害賠償請求や、後遺障害等級認定の際に重要な資料となる

保険会社へ事故の詳細を報告する

現場で事故の発生を、自身が加入している任意保険会社へ連絡した後も、その後の状況について適宜報告しましょう。保険会社は、報告された内容をもとに今後の手続きや補償内容を判断するため、事故状況や治療状況に変更があった場合は、できるだけ早く伝えることが大切です。

交通事故の被害者の場合、多くは相手方保険会社が治療費を支払う(いわゆる一括対応)ことになります。

しかし、自身が加入している任意保険会社にも、現在の怪我や症状、診断結果、入院・通院の予定、手術の予定などに変更があった場合は、その都度正確に報告しておきましょう。

伝えるべき内容

  • 受診した病院名
  • 診断結果
  • 現在の怪我や症状の状況
  • 入院・通院の予定
  • 警察への届出状況

聞いておくべき内容

  • 人身傷害保険が利用できるか
  • 弁護士費用特約の有無
  • 今後の保険手続きの流れ

注意点
現段階では過失割合が確定していないため、自身が加入している保険のうち、人身傷害保険を利用できるかどうか確認しておきましょう。また、人身傷害保険を利用できない場合でも、弁護士費用特約を利用できるケースがあります。

そのため、利用可能な補償や特約について、保険会社へ確認しておくことをおすすめします。

相手の保険会社との対応

交通事故の相手方が任意保険に加入している場合、治療費や慰謝料などの損害賠償に関するやり取りは、基本的に相手方保険会社との間で行われます。

通常は、事故後数日以内に相手方保険会社の担当者から連絡がありますので、まずはその連絡を待ちましょう。

ただし、1週間程度経過しても連絡がない場合は、治療費の支払い方法などを確認するため、自分から連絡することを検討してもよいでしょう。

対応時のポイント

① 事実のみを伝え、推測や憶測で話さない

例えば、

  • 私にも非があったと思います
  • 怪我はたいしたことありません
  • もう治りました

などと安易に断定すると、後の過失割合や示談交渉に影響する可能性があります。

分からないことは、

  • 現時点では分かりません
  • 医師の診断結果を確認してからお伝えします

と伝えれば十分です。

② 感情的にならず冷静に対応する

保険会社は、感情ではなく事実や資料をもとに手続きを進めます。そのため、怒りや不満があっても感情的にならず、冷静に対応することが大切です。対応するのに大変な状況であれば、無理に自分で対応せず、弁護士に保険会社とのやり取りを代理してもらいましょう。

③ 対応した内容を記録に残す

相手方保険会社への連絡手段としては、電話・メール・問い合わせフォームなどがあります。

私個人の考えではありますが、メールでやり取りができるのであれば、記録が残り管理しやすいためおすすめです。後に弁護士へ相談する際も、やり取りの内容を印刷して共有することができます。
電話でやり取りをする場合は、録音をしておきましょう。

保険会社とのやり取りを記録に残しておくことで、後から内容を振り返ることができるほか、内容に食い違いがないか確認することもできます。また、弁護士へ相談する際にもスムーズに情報共有を行うことができます。

交通事故では、証拠を残すことが非常に重要です。そのため、保険会社とのやり取りについても、できるだけ記録として残しておくことをおすすめします。

警察による供述調書の作成

供述調書とは、交通事故の当事者である被害者や加害者から、警察官が事故の状況などを聞き取り、その内容をまとめた書類です。必要に応じて、目撃者から事情を聴取することもあります。

実況見分調書と同様に、刑事手続きの証拠となるだけでなく、損害賠償の示談や民事訴訟においても、過失割合などを判断する重要な資料となります。

供述調書の作成の注意点

被害者が長期間入院している場合は、警察官が病院を訪れて事情聴取を行うことがあります。
一方で、怪我の回復後に警察から連絡があり、後日警察署で供述調書が作成されるケースも少なくありません。警察官からの質問には、事故で起こったことを事実に基づいて正確に伝えましょう。

事情聴取の後は、供述内容を確認したうえで署名・押印を求められます。記載内容が実際の供述と異なる場合は、安易に署名・押印せず、その場で訂正を求めましょう。

一度署名・押印した供述調書は、後から内容を訂正することは容易ではありません。そのため、署名・押印をする前に、内容を十分確認することが重要です。

もし、供述内容と異なる記載があるにもかかわらず、訂正に応じてもらえない場合は、内容に納得しないまま安易に署名・押印をしてはいけません。事実と異なる内容であれば、繰り返し訂正を求め、それでも訂正されない場合は、署名・押印をせずに持ち帰る意思を伝え、必要に応じて後日改めて対応しましょう。

私自身も、供述調書の内容を確認したところ、実際に話した内容と異なる記載がありました。

そのため、警察が作成した書類であっても、実際に供述した内容どおりに記載されているとは限りません。署名・押印を求められた際は、「警察が作成した書類だから大丈夫」と思い込まず、一文ずつ内容を確認し、事実と異なる記載があれば、その場で訂正を求めることが重要です。

供述内容と異なる調書に署名・押印するデメリット

  • 一度署名・押印すると、後から訂正することが難しくなる
  • 加害者の責任が実際より軽く判断される可能性がある
  • 過失割合が被害者に不利となる可能性がある
  • 慰謝料・休業損害などの損害賠償金が減額される可能性がある
  • 示談交渉や民事訴訟で不利な証拠となる可能性がある

交通事故証明書を取得する

交通事故証明書とは、警察に届け出のあった交通事故について、その事実を証明する書類です。保険会社への保険請求や損害賠償請求、労災保険の手続きなど、さまざまな場面で提出を求められる重要な書類となります。

保険請求や損害賠償請求などで必要となることが多いため、交通事故後は早めに取得しておくことをおすすめします。

交通事故証明書の取得方法

警察による供述調書の作成など、交通事故に関する手続きが終わると、警察で確認された事故情報が都道府県の自動車安全運転センターへ提供されます。その情報をもとに、自動車安全運転センターが交通事故証明書を発行します。

交通事故証明書の交付を申請できるのは、以下に該当する方です。

  • 交通事故の加害者
  • 交通事故の被害者
  • 交通事故証明書の交付を受けることについて、正当な利益のある方
    (損害賠償の請求権のある親族、保険金の受取人等)
  • 上記の者の代理人
    (交通事故に基づく損害賠償請求の代理人弁護士、任意保険会社の担当者など)

①ゆうちょ銀行・郵便局で申請する

交通事故証明書は、全国のゆうちょ銀行・郵便局から申請できます。まず、自動車安全運転センター事務所や警察署・交番・駐在所などに備え付けられている「交通事故証明書申込用紙」に必要事項を記入します。

その後、最寄りのゆうちょ銀行・郵便局で、申請書と交付手数料を添えて申請します。交付手数料および所定の払込料金が必要です。料金は変更される場合があるため、最新の情報は自動車安全運転センターでご確認ください。

交通事故証明書は、申請者の住所または希望した送付先へ郵送されます。申請から手元に届くまでの目安は10日程度です。※交通事故証明書申込用紙の様式は、都道府県によって異なる場合があります。

②自動車安全運転センターの窓口で申請する

交通事故証明書は、各都道府県の自動車安全運転センター事務所の窓口でも申請できます。窓口に備え付けられている申請用紙に必要事項を記入し、交付手数料を添えて申請します。

事故情報が警察から届いている場合は、原則としてその場で交通事故証明書が交付されます。

一方で、事故情報がまだ届いていない場合や、事故が他の都道府県で発生した場合は、その場での交付はできず、後日、申請者の住所または希望する送付先へ郵送されます。

なお、代理人が交通事故証明書を申請する場合は本人の委任状が必要となります。

③インターネットからの申請

自動車安全運転センターの申請ページから、交通事故証明書を申請することもできます。

インターネット申請は、交通事故の当事者本人が対象です。警察へ届け出た住所から変更がない場合など、利用条件があります。申請後、手数料の支払いが確認されると、交通事故証明書が郵送で交付されます。

交通事故証明書の申請ページ(自動車安全運転センター)

④任意保険会社から取得する

被害者または加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険会社が交通事故証明書の写しを保有していることがあります。

必要に応じて、担当者へ送付を依頼しましょう。なお、提出先によっては原本の提出が必要となる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。

注意点

人身事故は事故発生から5年、物件事故は事故発生から3年を経過すると、原則として交通事故証明書の交付を受けることはできません。

私自身の経験では、事故から約1か月が経過しても交通事故証明書を取得できず、確認したところ、警察が自動車安全運転センターへ事故情報を送付し忘れていたことが分かりました。その後、事故情報が送付され、交通事故証明書を取得することができました。
交通事故証明書が必要な場合は、事前に自動車安全運転センターへ事故情報が提供されているか確認しておくことをおすすめします。

※制度や手数料、申請方法は変更される場合があります。最新の情報は自動車安全運転センターでご確認ください。

損害賠償請求に備えて資料を保管する

交通事故では証拠を残すことが重要です。事故や治療、保険会社とのやり取りに関する資料は、できるだけ保管しておきましょう。

診断書の原本・コピー

診断書は、医師が怪我の内容や診断結果を記載した重要な書類です。

交通事故では、警察への提出による人身事故への切り替えや、保険会社との各種手続きなどに利用されます。

また、後遺障害等級認定の手続きや、保険会社とのやり取り、弁護士への相談において、事故直後の症状や診断内容を確認する資料として利用されることがあります。

さらに、勤務先へ休業の申請を行う際や、労災保険を利用する場合には、会社や労働基準監督署へ診断書の提出を求められます。

そのため、診断書の原本だけでなく、コピーも作成して大切に保管しておきましょう。

診断書作成費用の領収書

交通事故では、診断書や後遺障害診断書などの作成費用が必要になることがあります。

これらの費用は被害者が一旦立て替えて支払うことが多いため、領収書は大切に保管しておきましょう。診断書作成費用は、交通事故による損害として相手方へ請求できる場合があります。

また、後になって保険会社や弁護士から提出を求められることもあるため、診断書そのものだけでなく、作成費用の領収書もあわせて保管しておくことをおすすめします。

通院交通費の請求方法と保管するもの

タクシーで通院した場合
通院時のタクシー代が認められるかどうかは、怪我の内容や地域の交通事情などを踏まえて個別に判断されます。そのため、事前に加害者側の保険会社へ確認しておくことをおすすめします。

自家用車で通院した場合
交通費は、一般的に走行距離1km当たり15円を基準として燃料代が算出されます。そのため、ガソリン代の領収書を保険会社へ提出する必要はありません。
ただし、有料駐車場や有料道路を利用した場合は、通院に必要な実費として認められることがあります。保険会社へ請求する際に領収書が必要となるため、大切に保管しておきましょう。

公共交通機関で通院した場合
公共交通機関(電車・バス)で通院した場合は、原則として保険会社へ領収書の提出は必要ありません。通院交通費明細書に記載した区間運賃を基に認定されます。

徒歩・自転車で通院した場合
交通費が発生していないため、原則として通院交通費は認められません。なお、自転車にて有料駐輪場を利用した際は、領収書の提出が必要となります。

診療明細書も保管しておきましょう

労災保険や相手方保険会社による一括対応などで、治療費を自己負担しない場合は、領収書や診療明細書を受け取らないことがあります。

しかし、診療明細書は病院へ依頼することで発行してもらえる場合がありますので、可能であれば保管しておくことをおすすめします。

診療明細書には、受診した病院名や通院日、受診した診療科のほか、実施された検査や治療内容などが記載されています。

そのため、後から通院状況を確認する際や、保険会社とのやり取り、弁護士へ相談する際の資料として役立つことがあります。

また、通院交通費を請求する際に通院日を確認する資料として活用できる場合もあります。

保管資料一覧

交通事故では、後から必要になる資料が多くあります。次の資料は、示談や保険請求、後遺障害認定などに備えて保管しておくことをおすすめします。

医療関係の資料

  • 診断書の原本・コピー
  • 診断書作成費用の領収書
  • 通院交通費の領収書
  • 診療明細書

事故関係の資料

  • 事故直後の事故現場(写真・動画)
  • ドライブレコーダーの映像データ
  • 監視カメラの映像(取得できる場合)
  • 加害者とのやり取りの記録(録音・メール)

保険関係の書類

  • 加害者側保険会社とのやり取りの記録(録音・メール・書類)
  • 被害者側保険会社とのやり取りの記録(書類・メール)

公的機関の資料

  • 交通事故証明書

状況によって必要な資料

  • 労働基準監督署とのやり取りの記録(書類・音声)
  • 会社とのやり取りの記録(書類・メール・音声)
  • 弁護士とのやり取りの記録(書類・メール)
  • MRI・CT・レントゲン等の画像データ(CD-R等)